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死因:扇風機

 「なに馬鹿なこと言ってるのよ」

夏の夜。クーラーは壊れて 頼れるのは扇風機と団扇だけになった彼女に 電話をしました。

ラフレンツェや 忘れてはいけないよと 何処かの魔女のように僕が彼女に電話で諭したのは 扇風機をつけっぱなしで寝ると死にますよという 至って簡潔な内容。

そしたら 返ってきた言葉が最初のアレでありまして。
多少苛立った様子の彼女 多分現在時刻が夜中の一時と言うのが最たる理由だと思われますが とにかく厳しい口調で 僕に云います。

「扇風機つけっぱなしで寝たからって 死ぬわけないじゃない」

いや それが死ぬんですよ。

「死にません。あなた いつまで迷信を信じてるの?そもそも扇風機がよくないって言うのは 風のせいで水分が蒸発して水分不足になるからで タイマーをちゃんと設定すれば問題はないの」

いや そうじゃなくて。

「そうじゃないなら何なのよ。まぁいいわ 私はもう寝るから。じゃ」

あ ちょっと待っ

ガチャン ツーツー


結局 話を聞かないまま 彼女 電話を切ってしまいまして。
ああ 彼女の言うように迷信ならばいいのですが。
でも それなら僕 電話なんてしなかった。確かに扇風機をつけっぱなしで寝ると 死ぬんですから。

彼女との最後の会話がアレなんてなぁ と若干落ち込みながら 結局 僕も眠りに落ちまして。


次の日 恐る恐る彼女のマンションに訪ねてみれば ですよ。

そこにあったのは ベッドのそばで周りっぱなしの扇風機。それと 恐らく昨夜まで彼女であっただろう 大量の肉片。

ほら だから言ったのに。


扇風機をつけっぱなしで寝ると死ぬのは 身体が冷えるせいじゃない。

気づかないまま巻き込まれて ミンチにされて死ぬから つけっぱなしにして寝てはいけないんです。


本当に夏は恐ろしいなぁと辟易しながら 僕 扇風機のスイッチをカチリと切りました。
佐々木 | 短編 | 00:00 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |

いただきます

 人間が、食べたい。

随分前から、ずっとそう思っていました。勿論、到底人には言えないことなのであまり口には出さず黙っておりましたが。
あ、人ならば誰でも構わないというわけではありません。食べるのならば女性を、それも愛した女性を食べてしまいたい。出来ることならば、その白魚の様な指を先端からがりがりと噛み千切り、溢れる血を啜り骨まで咀嚼してみたい。なお、愛しているから自分に取り込みたいのか、と言われれば、大してそうでもなく。

ただ、自分の好奇心と食欲に、貪欲なだけなのです。僕と言う人間は。
ただ、見てみたいだけなのです。人の手を噛みちぎるとどの様な反応を示すのか。
ただ、味わってみたいだけなのです。人の手を租借するとどの様な味がするのか。
ただ、その好奇心をを満たしたいだけなのです。僕と言う人間は。

されど中々その欲望は叶う事はなく。
少し前、僕、ひとつ前の、女王気質な彼女に、ある日勇気を出して言ったのです。
「右目を食べさせてくれたらずっと服従しますから」
けれどその勇気も虚しく「奴隷一人作るのにあたしの片目は高すぎるわ」と一蹴されて、そこで恋も終わってしまいました。

で、今の彼女に至るわけなのですが。
前彼女とは違って、彼女の微笑みはふわふわと柔らかく、簡単に言うなら癒し系。
そんな彼女には流石に「君が食べたい」とは言い辛くて。それでも願望は捨てきれないので、二人きりでいる時は甘える振りをして、彼女の指を噛みちぎる妄想をしながら、彼女の右手の薬指をしゃぶり時折甘噛みし。それでも、実は十分満足だったりします。ほら、僕にも理性というものがきちんと備わっていて。流石に本当に食べたらヤバイと解っているから。

まぁでもたまぁに隠しきれなかった願望がひょっこり頭を出して「ああ、食べたい」などと言ってしまうこともありますが、そんなときは、アレです。
「え?ご飯、作ろうか?」などと首をかしげる彼女の頬にそっと指を滑らせ「いや、君が食べたいんだ」と甘い言葉を囁きながら、組み敷いて。実はそういうときは彼女も結構ノリ気だったりして。
大概そんな感じで、終わっているのです。大概は。

というわけで、今日も彼女の指をくわえているわけなのですが。
……なんというか、今日も……いや、いつにもまして彼女の指は美味しく感じます。
ほんのりしょっぱさが混じるのは、汗なのでしょうか。
ああ、今はこうして舐めているけれど、この指先を噛み裂いてしまいたい。
本能の赴くままに顎を動かして、歯で擂り潰して、この肉を飲み込みたい。
今日は気分が乗っているのか、やたらとそれが鮮明に想像できて。その味、その感触が、まるで本当に食べているかのように、はっきりと感じられ。
とにかく食べたくて食べたくて食べたくて、その願望は筆舌尽くしがたく。

ほぼ無心になりながら、彼女の指を舐める僕の耳を、不意に彼女の絶叫が劈いた。
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!もうやめて!やめて!」

何事か、と思って、彼女の指を見てみれば、ですよ。
その指先、第一関節くらいまで無くなっておりまして。
あれ、愛しい彼女の指先はどこへ行ったのだろうと思いながら、ふと咥内を舌でなぞると、僕の口の中、細切れになった肉らしきものや何か硬いものが残っていて。
それに気づいた瞬間、鼻をつんと血の匂いが突き。
泣き叫ぶ彼女と口の中の感触を確かめながら、あっと気がついた。

どうやら僕、妄想と現実の区別がつかないまま、彼女の指を食べてしまったらしい。

申し訳ないな、とかとんでもないことをしてしまった、などと思いつつ。
それでも、僕の口から出てきたのは謝罪の言葉でも何でもなく。

「……もっと、食べていいですかね」

そう言うと、僕、血のついた唇をぺろりと舐めて、弾かれたように彼女に飛びかかった。
佐々木 | 短編 | 00:00 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |

0時47分、屋上にて。

 「もし私が死んだら、お願いがあるんです」


優しく、されど少し寂しそうに微笑んで、彼女は云いました。


「もしも私が死んでも、私を憶えていてください。けれど、私を思い出さないでください」

「私のことは、どうぞ記憶の奥底に沈めたままでいてください」

「あなたの中に私を遺して欲しいんです。忘れないでいてほしい。けれどそうしたら、あなたは辛い思いをするでしょうから。だから、私を思い出さないでください」


汗ばんだ額にはりつく髪を掻きあげ、何も答えられない僕に向け、更に彼女は言葉を続けます。


「……それと、私が死ねばきっとあなたには変化が訪れるでしょう」

「刹那の別離であれ、永久の別離であれ。別離と言うものは人を変えます」

「別離の中からは沢山の物が見出せる。哀しみや諦めだけではないんです。そう、本当に沢山の物が学べるはず」

「それを……うん、簡潔に言うと『成長』と呼ぶのかな」

「成長してしまうことが、変わってしまうことが。きっと辛いと思う事もあると思います。変化は他者であれど自分であれど、受け入れることは難しいから」

「けれど私が死んであなたに起こる変化が……あなたがする成長がよきものであれば、その変化を忘れないでください。私が居亡くなったことに対する哀しみは忘れてしまっても、ね?」


弱々しくもはっきりと云い切ると、彼女は腕を伸ばし、そっと僕の頬にふれました。


「……例えあなたがどれほど変わってしまっても、私はあなたを愛しています」

「だからどうか……どうか私のお願いを覚えていてください。そして、叶えてくれたらとっても幸い」

「思い出さなくなる事を、変わる事を恐れないで。大丈夫、大丈夫だから……」


浅く、荒く息を吐きながら、それでも彼女、僕を安堵させるようににっこり笑って。

「……それじゃあ、さよなら」

と、最期の呼吸と共に告げました。



――0時47分、屋上にて。
僕の指紋、べっとりついた包丁の柄を腹から生やした彼女より、呪いのような別れの言葉が僕に。

佐々木 | 短編 | 00:00 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |

因習ノ噺

 君達は座敷童を知っているだろうか。
 赤面垂髪の5,6歳の小童の姿をした妖怪である。彼らはたいてい、間引きや飢饉で死んだ子供と言われているが、人を恨みはせず寧ろ見た者に幸せを与えるとも言われている。
 そして私、真壁一郎が住むこの村にも座敷童の伝承が在った。寧ろ、座敷童の伝説がこの村を支えていた。たとえ飢饉になろうとも、彼らが私たちを救うとこの村の人間は信じ込んでいるのである。
 だが、最近はその信仰も薄れつつあった。いや、老人たちは未だ熱狂的に信じては居るのだが……。若い男女は殆ど彼らの存在を信じようとしない。ここ1ヵ月ばかり飢饉がこの村を少しずつ蝕んでいるからであった。
 日照りが続き、雨が降らない。
 其れが故に、作物が取れず私たちは飢えていく。
 勿論、誰の所為であるはずはないのだ。だが、老人は言う。座敷童の恩恵が足りぬのだと。それを受けるように若い男女も言う。座敷童などが居るなら此れを救って見せろ、と。
 だが無情にも、座敷童は私たちを救おうとはしなかった。乾きは続き、作物は取れない。
 そして、とうとう人々は狂い始めた。もし座敷童が居ないのならば、新しく座敷童を作ればよい。そうすれば彼らこそが私たちを助けてくれるだろう――と、叫び始めた。
 そう、つまり彼らは、幼子を殺め新たな座敷童を作ろうとしているのである。

  ***

 夢を見た。
 冷たく暗い場所に私は一人立ちつくしていた。どこからか赤子の泣き声が聞こえてくる。どこにいるのだろうか、と探し歩こうとした刹那、足下に赤子が転がっていた。この顔は、そうだ、一昨日ばかりか前に毅郎の家で生まれた赤子だったか。何故その子が私の夢にいるのかはわからなかったが、ひとまずは拾い上げようとした。だが、驚く事に――とはいえ夢だから驚かなくてもいいのだが――赤子は私が拾う寸前に自立し、口を開いたのである。
「一郎、明日おれは殺される」
「ど、どういうことだ。何故私の名前を知っているのだ」
本来なら喋ろう筈もない赤子が突然そんなことを言うものだから、私は思わず狼狽してしまった。だが、赤子はお構い無しに続ける。
「おれは明日、座敷童になる為に殺されるのだ。そう父親が言っていたのを聞いた。母親は最後まで止めたらしいが、腹を三度蹴られとうとうおとなしくなった」
「ミヨさんが……」
「母親はおれを産んだばかりだったから相当つらかったろう。だからおれは母親を責める心算は無い。だが、それよりも許せぬのは父親だ。あの野郎、おれが口を利けぬのを良い事に『そうだこの子もそれが幸せだろう』とへらへらと笑いながら爺におれを渡そうとした」
 それを聞き私は心が痛くなった。毅郎は昔から自分以外のものには大切さを見出せぬ人間で、長い物には巻かれろの精神を突き通していたものだから私は相当奴が嫌いであった。やはり、今回も奴はそれを貫いたのか。赤子まで殺めようとは……。
「……今おれの事を可哀相だと思ってくれたのか」
「あ、ああ。何故分かった」
「今のおれには手に取るように分かるのだ。一郎、おまえはいい人間だなあ。おれのことを怪しむどころか、悲しんでくれるとは」
赤子が喜んだことで、私も少しばかり嬉しくなった。それがどうやら表情に出ていたのか、子も少し微笑んだ。微笑んだのだが――それも一瞬であり、すぐにまた暗い表情を見せ語り出した。
「……なぁ一郎、おれは座敷童に成る心算は無いのだ」
「確かに、そんな理由じゃあ到底成れないだろうな」
「あぁ。おれは絶対座敷童にはならない。こんな村、救ってやるものかとも思う。この村の人間はおかしいんだ。縋る物が在るのはいいだろう。だが、それに頼りすぎて己の努力を忘れている。縋り泣き喚けば何かが救ってくれると思いこんでいるんだ。おれはそんな奴ら、絶対に助けはしない」
「あぁ」
「それに、今までの座敷童たちは村の事を恨んじゃいないから村人を幸せにしてきたんだ。自分たちを殺すことに少しでも人が葛藤したから受け入れることができたんだ。それに、あいつらの死は他が生きるためだった。だから仕方がないとも言えるさ。だが、おれはどうだ。おれは村人の幸せとやらの為だけに殺されるんだ。そんなのおかしいじゃないか」
「……あぁ」
 確かにそのとおりだと思った。この赤子は名前すらつけられないまま、誰からも愛情を得られないまま死んでいくのだ――ミヨさんは抵抗したらしいから、それを愛情だと云えば愛情なのかもしれないが――それで、どうして人に幸せを与えられよう?それも、愛情に対して夢すら抱けないまま、恨み辛みを背負い死にゆくのだ。それはやはり、狂っているのではないか。
「……そろそろ、時間か」赤子がまだ歯すら生えていない歯茎で、唇をきりりと噛んだ。そして私をじっと見つめ、
「一郎。頼みがある」と云った。
「なんだ」
「おれは死にたくない。だが、一郎が目覚めたときにはおれはすでに首を捻られているだろう。だから、これだけ頼みたいのだ」
「あぁ、云ってくれ。私に出来ることなら何でもしよう」力強く云うと、赤子は未だしっかり開いてもいない目を細めた。
「……おれのことを、忘れないでくれないか。おれの云った事と、おまえが今見ているこの夢を、おまえの記憶の中に留めていてくれ。そうすればせめて、おれも成仏は出来るだろうから」
「当たり前じゃあないか!私が忘れるとでも思うのか!」
気付けば私は大声で怒鳴り散らしていた。それほど激昂していたのだろうと思う。
 何故、こんな赤子がこんな事をを云い遺さねばならぬのか。
 何故、こんな赤子が未来に絶望せねばならぬのか。
 よく考えずともおかしいじゃあないか。産まれたばかりの赤子が、未来に希望が持てないなど、狂気の沙汰だ。そんな村ならば、私は幸せなど来なくても良い。
 そう考えながらきりりと唇を噛んでいると、赤子がふと呟いた。
「そろそろ、朝だ」
「……助けられなくて、すまない」
「どうせどうしようもないのだ。一郎が謝る必要はないぞ」
それから、微笑んでいるのやら泣いているのやらよく分からない顔を見せて、
「……ありがとう、一郎」と云った。
 そして、そこで私の意識は暗溶した。

  ***

 目を開くと陽光がきらきら輝き私の狭い家の中を暖めていた。
 ふと、昨日の夢を思い出す。あの夢は一体何だったのであろう。私が勝手に創りだした妄想なのだろうか?だが、あの赤子の言葉は、あの視線は……どう考えても、夢とは思えない。
 服を着替え、ばたばたと家から駆け出す。向かう先は勿論、毅郎の家である。どうか、あれが夢のままで在って欲しい――
 だが、毅郎の家に辿り着いた私が見たのは、毅郎とミヨさんの子が首を捻られ、新たなる「座敷童」として亡骸を祀られている所であった。

佐々木 | 短編 | 00:00 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |

ハイカラな服を纏い高らかに笑う墓前

 
前々から大嫌いでいつも殺してやりたいと思っていたあの男が死んだと聞いて慌てて墓をまいることにした。もちろんその死を悼むわけじゃあなくて、ただあいつが死んだという事実を確かめ笑ってやるためだ。そんな理由だったから喪服は着ないで寧ろ派手な服を着てやった(それはきっと、葬式や何かに着て行ったらきっと遺族に刺されるような服だ)

そして今、目の前にあるのは奴の名が刻まれた灰色の墓石で。あたしの身長より少しだけ低くなったソレはあんまりにも無様でもうその時点であたしは顔がにやけていた。たぶん、傍から見たら恋人を失った悲しさで狂ってしまった女か何かに見えていたと思う。だって実際全然知らない人に「……だいじょうぶですか?」とか尋ねられたし。うん、まあ確かにあたしはちょっとおかしいのかもしれないけど少なくともこいつが死んだ悲しさで狂うとかそういうんじゃあないから少しだけしおらしく「大丈夫です」と答えておいた。名も知らぬその人はあたしを憐れむような目で見て「……がんばってくださいね」と言って去って行った。人を見る目が全くないやつだ。

さて大嫌いだったやつの墓を前にして悲しむなんて言うのはよっぽどの馬鹿がすることで、あたしはとりあえずその墓を撫でてみた。冷たい。あたしより背が高かったあの男はあたしよりだいぶちいさくなってここに寝ている。なんと、無様。本当なら蹴ってやりたかったけれどとりあえず遺族に失礼だとあたしの本当にちょっとだけある良心がとめたからそれ以上墓に触れるのはやめておいた。そして、その代りにあたしは奴の墓の前で笑ってやった。

「……あっははははははははははははははははははははは!本当に死んでやんの!ばっかみたい!」

笑いが止まらない。生前あたしにあれだけのことをしたあいつは今ここで無力にそして無様に埋まっているのだ。勝ったのは、あたし。負けたのは、あいつ。なんといい気味なんだろう!
あんまりにもおかしくてうれしくて思わず地面にしゃがみ込んで笑ってしまった。あははははは、とばかみたいな笑い声が溢れて溢れて止まらない。止める気もない。そうやってかなり長いこと笑ったところで、あたしはふと違和感に気づいた。

「……なにこれ」

頬をなまぬるい液体が伝う。雨かと思ったけど空はよく晴れていて(きっと空もあいつの死を祝福してるんだ!)雨など降るはずもなかった。慌てて眼に指を持っていくと、やっぱり流れているのはそこからで。つまりこれは

「……なんで、ないてんの。あたし」

あたしが泣いているということに他ならなかった。びっくりして涙をぬぐう。なんで死を祝福しにきて悼んで泣いてるんだ。ばかじゃあないの?あたしは、あいつのこと大嫌いだったのに。殺してやりたかったのに。どうして泣いてるんだ。いろんなことが頭のなかをぐるぐるする。さっきまではあいつの最悪なところしか思い出さなかったのに、なんでかしらないけれど今はあいつのちょっとだけあったいいところだけを思い出していた。そんな本当にかすかな思い出で感傷に浸るなんてばかみたいだ。なのに、あたしは今それを止められない。

「ば、かじゃないの……」

自分に向けて、とあいつに向けて。二重の意味を持たせるには最適な言葉を絞り出すように呟いてあたしはうなだれた。口元はまだ笑っているという感覚があるのに、ただ涙が止まらない。あたしは正真正銘の、ばかだ。

ああ、もう、そうだ。認めればいいんだろう!そうさ、なんだかんだであたしはきっと、結構あいつがすきだったのかもしれなかった。大嫌いで殺してやりたかったけれど、そのくせあたしは大好きであたしを見てほしかったのかもしれない。今となってはよくわかんないけど、きっとそうだ。あたしは、ばかだ。そして死んでしまったあいつもばかだ。墓の前で項垂れながら泣いて笑っているあたしは、きっと本当の気狂いに見えるのだろうと思った。ああ、そうだ。あたしは本当の気狂いだ。そんなことは、知っている。

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お題元:ジーザス!様
佐々木 | 短編 | 00:00 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
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