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 夜 二時ごろ。
明日は早いし 早く眠ろうと思いながら 僕 温い蒲団の中でぼんやりしていました。
瞼は重く 思考もうつつ。ああ もう少しで夢の世界だな そう思い 眠りに身を委ねようとしたら ですよ。なにやら ごほごほと咳の音が聞こえて 僕 うっかり目を醒ましてしまいました。
このおっさんくさい咳 間違いなく 父さんだなぁ。全く 咳をするくらいなら煙草なんて止めりゃいい。言っても きかないけど。

眠りを妨げられ 若干の苛立ちを覚えながら 僕 耳栓を入れ直し 部屋の扉も再度閉め また蒲団に潜って眠ろうと うわ また咳してるよ。もう 煩いな。大体 何で一階の音が二階まで聞こえるんだ。おかしいだろ 欠陥住宅め。うわ ちょっと咳し過ぎだよ ヘビースモーカーめ。


結局 何度耳栓を入れ直そうと扉を閉めようと 階下の父の咳は聞こえるので 仕方なく 僕 真冬だというのに扇風機をつけて (ちなみにこの扇風機 夏に僕の彼女を巻き込みミンチにした曰く付きの品であります) 扇風機が回る音で自分を誤魔化しながら寝た次第であります。



で 次の日。


結局あまり眠れず 眠い目を擦りながら降りてみれば 珍しく起きている父の姿。よし 昨日の文句を言ってやろう。

父さん 父さん。あの 何とも云い難いんですが 咳の音量 もう少し下げてくれないかなあ。僕 昨日 あなたの咳が煩くて眠れなかった。耳栓して ついでに扇風機までつけたんですよ。ほら 見てくださいこの隈。酷いでしょう。


「お前の顔がひどいのはいつものことだ 馬鹿息子。大体俺は昨日 咳なんて全然してないぞ。十二時には下で寝てたしなあ。聞こえたの 何時だよ」

二時ですよ。……えっ じゃあ僕が聞いた咳って何ですか。

「幽霊じゃないのか」

幽霊なんていませんよ。
それより ほんとに十二時には寝てたんですか。信じ難いなあ。

「本当だ。ほら この2ショットチャットのログを見てみろ。十二時で止まってるだろ」

あ 本当だ。でもそれ 誇れませんよ。これ 母さんに云っておきますね。

「いや それは止めろ。まあいい 父さん ちょっとユミちゃんとデート……いや パチンコに行ってくるから お前も二度寝するなよ」

云い直した後も前も最低です 父さん。母さんに全部……あ 行きやがった。あの駄目親父め。あいつの息子で居ることが 本当に恥ずかしい。


しかし 父さんじゃないとすれば あの咳は誰だったんだろう。隣の家だろうか 聞こえないこともないけど 流石に耳栓してりゃ聞こえないからなあ。ああ 気になる。

「ごほごほ」

そう こんな感じのおっさんくさい咳。
幽霊だったら とんだ迷惑だよな。まだ 何も云わないで見られている方が マシだ。

「ごほっ……うぇえ」

いやしかし 何で咳の音って不快なんだろう。こんな音 いらないよ。早く 音抜きの技術が開発されりゃいいのに。

「ごほっ」

ああしかしさっきから咳が煩いなあ。全く これじゃ昨日とおな……あれ?

おかしいな さっき 父は出掛けた筈なのに。そして今 家には僕しか居ない筈なのに。なんで 咳の音がしてるんだ。

「ごほっごほっ」

止まない咳の音の方 押し入れに向けて 恐る 恐る 振り返る。なにもない筈の其処 暗闇が広がっている筈の 押し入れの扉の隙間 何故か 赤く血走った目と ぽってりと太った 誰かの指 覗いて。
佐々木 | 短編 | 00:00 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |

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