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真夏の夜

 「     」って。

それを言われたときに、生まれてきたことをただ後悔して後悔して後悔して。ああ、何も考えたくない。ただ視界は真っ白で、頭の中はキィンと鳴る。さびしさは鳴る、と語った作家は誰だったか。いや、恐らくこれはそういう音ではないのだろう。きっとさびしさは、もう少し綺麗な音だから。

不意にガタンガタンと何かが迫る音。耳鳴りを阻害する。時速何キロで走っているのだろうか。その鉄の塊は眩しくきらめきながらゆっくりと走る。二十メートル、十メートル、数メートル。鉄塊が迫るにつれ、私はそれが放つ光に惹かれていく。夏の虫のようだと自嘲して、あれに巻き込まれたら痛いだろうかと考えた。そう思ったせつな、鼻先を鉄塊が過ぎた。飛び込み損ねたことを悔やむと共に、やはり虫は光に近づきすぎたとて死ねないのだと識った。

踏みきりをすぎ坂を越え、気づけば頭の中の音は消えていた。鉄塊が過ぎるとき、音も共に連れ去ったのだろうか。それとも、それを流したのは都会の夏にしては涼しい夜風だろうか。いづれにせよ、私の中で鳴った衝動は影をひそめた。

歯車は回り、針は時を刻む。この冷たい風が吹き終わるときまでは、世界は何を気にすることもなく巡るんだろう。でもそれでいい。事を知りすぎてはきっと眠れないから。知らない、気づかない、気にしない。その方がずっと、幸せだ。

ぐらり。目眩。世界が回る。速くなった鼓動が生を刻む。痛いほど。背中が、熱い?

振り向く。夜にきらめく銀。熱い背中。黒に紛れてそれは消える。何が起きたか理解しようとして、やめた。そう、さっきも言ったけれど。



知りすぎては、きっと眠れないから。



(暗溶)
佐々木 | 短編 | 00:00 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |

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