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アンハッピー・ニューイヤー

 「大体なんで毎年毎年明けましておめでとうだのハッピーニューイヤーなどと言わなければならないのですか。理不尽です」

年越し蕎麦を啜りながら 彼女 突然そんなことを言って怒り始めました。
いやいや だって新しい年の初めですよ? 祝いたくもなるじゃないですか。

「何を言ってるんです。そもそも ハッピーニューイヤーとか言ったところで その年がいい一年になったことなんて本当にありましたか? 本当に幸せでしたか?」

うっ そ それはまあ 確かに微妙な一年の方が多かったですけど。

「ほら そうでしょう。大体一年での幸福と不幸の比率なんてよくて4:6 悪ければ2:8ですよ? それなのに私達は毎年ハッピーニューイヤーだの明けましておめでとうだの 言っていて空しくないですか」

ま まあ確かに空しいかもしれませんが いいじゃないですか 一年の初めくらい希望を持っても。

「そうやって在りもしない希望に飼い殺されたまま また無駄な一年を過ごすんですか?」

ど どうしたんですか 今日は。何だって そんなに機嫌が悪いんですか。僕が何かしましたか?

「いえ 坂上さんは別に何もしてないですけど。ただムカついたんです。このまま今年もくだらない事を言ってくだらない一年を過ごすんだろうなあって思ったら」

そういうと 彼女 右手に持った箸を折れるんじゃないかってくらい強く丼に叩きつけ すっくと立ち上がりました。

「よし 決めた。私 今年はハッピーニューイヤーじゃなくて アンハッピーニューイヤーって言います! それで年が明けて浮かれている人を不幸のどんぞこに突き落としてやるのです。始まりが最悪だったら 何が起きてもまあ今年はこんなもんか って思えますもんね!」

そ そうですか。どうぞお好きに。

謎のポジティブは 結構な迫力を持っていて 僕が冷や汗を流しながら答えると 彼女 満足そうに肯いて座り また蕎麦を啜り始めました。ああもう こうして黙っていたら可愛いのに。黒いさらさらした長髪とか 透き通るような白い肌とか 切れ長の釣り目とか。あの白魚のような指がベッドの上ではあんなことに……。

とか くだらないことを考えていたら それを察したのか彼女 「何ですか 坂上さんいやらしいこと考えてるんですか。……触ったら怒りますよ」とかわいらしいことを言ってきました。ま お楽しみは後で ですね。

ちらりと時計を見遣れば 時刻は23時48分。あと12分で年明け ですかあ。今年も呆気なかったですね。

「あ 本当ですね。12分かあ。早く蕎麦食べなきゃ」

ちょっと食べるの遅くないですか?

「そんなことないですよう」

そう苦笑すると 彼女 慌てて蕎麦を啜り始めました。



そして 気づけば10分も経ち 今年も残すところあと2分。
どうにかギリギリ蕎麦を啜り終えた彼女は 安心したように丼を下げ 台所で何か少しごそごそとやった後に そっと僕の傍に戻ってきて ちょこんと座りこみました。

「あっとにっふんー」

そんな歌を口ずさむ彼女がかわいらしくて 思わず撫でようとしたところで今年も残り1分。
第九の荘厳なメロディがテレビから流れる中 僕 ぼうっと彼女の事を眺めていました。そして。

「ごー よん さん に いち……」

気の抜けるような彼女の声が 2009年最後のカウントを紡ぎ そして あっさりと年が明けました。
先程の会話 すっかり忘れた僕が「あけまして おめでとう」と彼女に言おうとした瞬間 何故か喉元に鈍い衝撃。

その後走った鋭い痛みに 何事かと彼女を見てみれば 彼女の左手には鈍く煌めく包丁。その切先は 僕の喉に吸い込まれておりました。

「というわけで坂上さん アンハッピーニュ−イヤー!」

え そういうことかよ。というか 今年もまた殺人オチかよ。年初めだっていうのに そろそろマンネリ化してきたぞ。

抗議しようにも穴の開いた僕の喉 言葉の代わりにプヒュープヒューと空気を空しく吐き出すだけで。
結局 そのまま喉の痛みに意識が遠くなり 僕は倒れたのでした。



……で その後。
手始めに僕を刺した彼女 そのまま外に出て 「アンハッピーニューイヤー!」と連呼しながら手当たり次第に初詣に来ていた人達とかを刺殺して 見事に新年の幸福ムードを不幸に塗り替えたそうな。

でもその代わり それが今年の大災厄となったのか 僕の住む町のあたりだけ 結構2010年は可もなく不可もなく過ごせたようです。


ん。あ 僕ですか。
あのあと 一度意識が戻りまして でも致命傷だし さんざ悶え苦しみまして。

まあ結果的に 2010年は5分ほどしか堪能出来ず 大災厄に巻き込まれた被害者Aみたいな感じになったんですが 彼女が幸せならそれで構いません。ねえ?

というわけで 明けまして残念でした。
今年もよろしくお願いいたします。

佐々木 | 短編 | 00:00 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |

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